『ソウルの橋の下』

ソウルを流れる巨大河川「漢江」は、遊覧船や橋のライトアップなどで知られる韓国
の観光スポットの一つです。
川は全長約500kmもの長さを誇り、27本の巨大な橋が架かっています。
そのどれもが個性的な橋で、ソウルを訪れた旅行者たちは思わずその姿を写真におさ
めたくなるでしょう。

イギリスの写真家マヌエル・アルバレス・ディエストロもその一人。
しかし彼が興味を惹かれたのは、そのアーチの形状やライトアップされた姿ではあり
ませんでした。
ディエストロは「橋の下」で撮影を行い、そこで驚くべき素晴らしい空間をとらえま
した。

ディエストロは橋が架かっている方向と並行にカメラを構え、無限に続くようなその
幾何学模様を撮影します。
橋脚が連続していくつも連なり、その中心に吸い込まれるようです。
まるで錯視のようで、とても魅惑的です。

イギリスから韓国に移住した矢先の2016年1月から、ディエストロはこのシリーズを
撮り始めたそうです。
自転車で川沿いを走っていて、その途中で休憩のため橋の下で止まりました。
すると、すぐに橋の下に見えるコンクリートの柱と梁の景色に目を奪われたそうで
す。
「端から端までその架かっている橋の姿が絶妙だったんです。まるで無限に続いてい
るような遠近感があって」とディエストロは振り返ります。

それから6カ月間というもの、ディエストロは橋の下にある自転車専用道を走り続け
ました。

橋の下の様子なんて、誰も普段気にも留めやしません。
しかしそんな場所で、ディエストロは素晴らしい光景に遭遇したのです。
ディエストロの作品は、歩みを緩め、普段見慣れた場所をいつもと違った角度から眺
めてみることの大切さを教えてくれています。

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