『背中は語る』

背中につけられた傷は「逃げ傷」と呼ばれます。
「背中の傷は剣士の恥だ」というセリフはワンピースの名場面の一つとして知られていますが、敵から逃げようと背中を見せたがために付けられた傷なので、背中の傷は情けないものだということです。

ルイス・ドゥ・ベルは人々の背中に注目した、ベルリンの写真家です。
ただし、背中の傷ではなく「背中のシワ」です。
ニューヨークを行き交う人々の背中のシワをアップで撮影した作品「Cartographies(地図学)」を制作しました。

https://www.instagram.com/louisdebelle/

ただ背中を映しただけの写真ではありますが、それぞれの洋服が形づくるシワは多種多様で、実に表情豊かなものです。
剣士はいませんが、工事現場で働く人やデスクワークにいそしむ人などなど。
それぞれのシワは、その背中の人がどんな働き方をしているのか教えてくれます。
背中の肉に食い込んだ洋服は体型を物語っていますし、じんわりと汗をかいていれば疲労感が伝わってきます。

シワしか映っていないのに、その人物のいろいろなストーリーを読み取ることができます。
作品は、シワの抽象的な美しさを表すと同時に、人々のポートレートやストリートスナップのようでもあるのですね。
逃げ傷のような情けないシワにならないよう、良いシワを背負っていきたいものです。

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