映画監督の視線

カメラマンや写真がテーマの映画、というカテゴリーがありますが、今回はそれに付随して「映画監督、撮影監督」をテーマに個人的に「写真を撮りたくなる」ような映画をご紹介します。
まず、カメラや写真がテーマの映画と言えばはじめに思い浮かぶのが、ミケランジェロ・アントニオーニの「Blowup」(邦題:欲望)です。
まだ写真やカメラに興味を持つ前に観た映画ですが、独特な撮影シーンやハービー・ハンコックの音楽とともに映像が記憶に残る映画です。
公開は1967年ですが、今観ても色あせるどころかミステリアスかつ不穏な空気に魅せられて見入ってしまいます。
さて、このBlowupの撮影監督はカルロ・デイ・パルマ、同じイタリア人映画監督のミケランジェロ・アントニオーニの作品に携わり、その後「ハンナとその姉妹」から多くのウッディアレン作品の撮影監督を
務めました。ちなみに題名のblow upは(フィルムを)引き伸ばす、と言う意味です。

写真家のキャリアと映画監督の作品を行き来する稀有な存在、瀧本幹夫さんが映画監督を務めた「そして父になる」「海街diary」も改めてじっくり観たい映画です。
「海街diary」では映画監督が撮影した写真が、写真集「海街diary」としても青幻舎から出版されました、その美しいことといったら。
映画監督、そして写真家としての視線を映画でも写真集でも楽しめる貴重な一本です。

個人的に大好きなミヒャエル・ハネケ監督の「Amour」(邦題:愛、アムール)。カンヌ国際映画祭でもパルム・ドールを受賞し注目された作品ですが、そのワンシーンワンシーンの美しさに
時間を忘れてため息さえ出るほど。
この「Amour」の撮影監督がダリウス・コンジ。彼の作品経歴を見ると「デリカテッセン」から始まり、デヴィッド・フィンチャーの「セブン」やベルナルド・ベルトルッチの「魅せられて」、ハネケの「ファニーゲーム」、
そしてウッディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」、2017年にはポン・ジュノの作品での撮影監督も務めています。
世界の名立たる、そしてタイプが異なる映画監督作品の撮影監督をしていることに驚きです。
好きな映画監督の作品を追いながら観るのも面白いですが、映画監督を追ってその作品を観るというのはいかがでしょう。
映画監督の視線と捕らえると、印象的なシーンが多く記憶に残り、実際に写真を撮影するとき、またはその前の構図を考えるときに参考、ヒントになるかもしれません。