『色鮮やかなボートの写真』

ギリシャには「カイキス」と呼ばれる、漁のための小型ボートがあります。
「カイキス」は木製で、色彩豊かに塗装されています。
漁師はそのボートに乗って、地中海に向かって網を投げ込みます。
そんな風景は、古代建築と豊かな文学、素晴らしい食事と並ぶ、ギリシャの代え難い遺産のひとつです。

「カイキス」は、5000年近く前からギリシャの伝統的な造船術によってつくられてきましたが、時代の変化とともに今日では継承者が減りつつあるそうです。

そんな「カイキス」とその暮らしぶりを写真集にまとめた人物がいます。
写真家クリスチャン・ステンパーの「Lupimaris -Wolves of the Sea」す。

http://www.lupimaris.com

この写真集には、99枚の伝統的な木製ボートの写真や、漁師とその日の収穫の写真が掲載されています。
ステンパーは20年前にギリシャのパロス島を訪れ、漁師と彼らのボート、そしてそのゆったりとしたライフスタイルに魅了されたそうです。

彼はキヤノン「5D mark II」を伸縮する台に取り付け、7mのジブクレーンを用いて真上から「カイキス」を写真に収めます。
ステンパーは「カイキス」を守る価値のある宝として紹介しています。
2010年にプロジェクトを始めて以降、写真に収めたボートの3分の1は売却されるか解体されてしまったそうです。
木造の造船術はプラスチックボートによってその地位を追われ、大型の産業漁業の発達によって伝統漁を廃業する漁師も多いと言います。

ステンパーが「Lupimaris -Wolves of the Sea」で伝えたいこととは、かつて根付いていた暮らし。
時間がゆっくりと流れ、人々にはそれを楽しむ余裕もある時代。
この作品は、現代の慌ただしいライフスタイルにおいて、ふと立ち止まって考える時間を与えてくれるのではないでしょうか。

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